以前はどこの川でも「エノハ」と呼ばれるタイプのヤマメ、アマゴしか居なかったと思う。
しかし、今日の渓流ではたとえ九州でも純粋な在来種と出会う事はかなり厳しい。
それは開発が進んだこと、釣り人の増加もあるが、放流魚の影響が意外と大きい。
放流事業が進むにつれ、放流魚との交雑も行われるわけだから古来より受け継がれてきた
正統な血統は失われつつあるわけで本当の意味での“エノハ”は激減している可能性が高い
しかし原始の容姿をしっかり残している,、要は天然系に近いエノハの棲息する川やエリア
も探せば以外に沢山ある。
逆に、純粋なサラブレッドというか古来からの固体のみで世代交代を行っている川というのは
例え源頭エリアだとしても極端に少ないと思う。
そういった川で出合えるエノハ達は本当に大切にしていきたいものだ。特徴はエノハの章で
述べたとおりの事なんだけど更に付け加えると、顔がとがっておりワイルドな趣がある。
またメスは尻ヒレが長い等の特徴がある。
では、なぜ同じ容姿を持ちながら、あえて「エノハ」と「本エノハ」に分けたのかと言うとそれは
“血統”の問題である。「エノハ」は放流、天然系いかんに関わらずパーマークの見える魚体を
総称したもの(一般的にはヤマメ、アマゴ)であるのに対して「本エノハ」は天然系のみを
指す。ここで本エノハの具体的位置づけを語る前に僕の一つの考えを紹介します。
元来トラウトの種族は、海に下り再度産卵の為に生まれた河へ戻り産卵することで種を維持
してきた。そして何億年からの地球環境の変化の一環で、氷河期が訪れ海に下るすべを
閉ざされたトラウト達は、その限られたエリアで世代交代を繰り返すようになる。それが
「陸封系」と呼ばれる魚達、そうヤマメ、アマゴなのである。九州のエノハ達も当然そうした
いきさつで世代交代してきた種なんだけど、僕は微妙に違う見解をしている。それはDNAの
問題なんだけど、もしかしたらエノハはもっと別のDNAを受け継いだ種族なのでは?と。
九州では、いや少なくとも僕の各ホームリバーでは以前は殆どこのエノハしか釣れなかった。
それは本流でも同じで、彼らは「本エノハ」として世代交代を繰り返していたのではないか?
そして養殖技術が高まり放流事業が盛んになるにつれ新しい血=DNAが入る事で銀毛が
増えて言ったのではないか?と考えている。元々トラウト族は海に下る習性がある訳だから
養殖だろうが天然だろうがそういったDNAは奥底に持っているとは思うし、そういった環境が
整えば人間誰もが思春期を迎えるようにトラウト達もそれなりの準備体質?に変わっていく
のではないか。
では、なぜ以前は本流でもエノハ中心に釣れていたのに今は減ってきたのか?
専門家でもないし詳しい事は良くわからないが放流魚の大半は降海性のDNAを色濃く
残したものが多かったのかもしれない。
それが各養魚場で世代交代するうちに更に降海性の血を濃くしていったのではないか。 そして放流により九州の各河川のエノハ達と交わる事により、以前よりも銀毛が増えていった
のではないだろうか?そう考えると九州のエノハは、岩魚で言えば「ゴギ」や「キリクチ」
のように亜種というか、微妙に別種族だったと考えると実に面白い。と、これが僕の
「本エノハ」に対する考えなんだけど、実際の河川ではDNAだ、血統だと言っても
専門家以外は解らないと思う。
だから僕は「本エノハ」に対する位置づけというか“定義”として状況を考える。
@ 「今まで放流がされていない河川(過去、現在、団体、個人を問わず)」 コレは当然!古来からの血統を受け継ぐ為。河川的に難しくても、源流 等の容易に潜入出来ないエリアも可能性が高いが個人的放流等もあるので 判断は難しい。 A 「堰堤や滝等遡上を完全にさえぎるものがある渓の上流」 源流部に放流の事実が無くても下流部は常に放流している。そんな河川 は普通にある。トラウトは産卵の為遡上する。しかし下流で成長した混血魚 が上流の純潔エリアで交配してしまえばまた混血が増える。だが遡上を妨げ る障害物があれば交配の可能性は低いわけだ。 |
要は放流魚、卵を含む混血の可能性が無いエリアのエノハが「本エノハ」として
位置づけている。
しかし今日、全く放流の可能性が無い、もしくは混血魚の遡上の可能性が無い渓を探すのは 例え九州でも難しくなってきている。(ある事はありますが・・・)だから僕はH・Pの表現の中で あえて“天然系”という言葉を使っている。そう、限りなく天然に近いという意味である。 だから、前ページで定義したように、可能性の高いエリアで出会えたヤマメ、アマゴは
混血のいかんに関係なく「原始の趣き」さえ残していれば全て天然系となるしそういった
エノハも含めて「本エノハ」なのである。 また、北陸の「海府ヤマメ」もエノハ固有種説と
似たような部分を持ち合わせていると僕は思っている。
僕の地元には県指定?のイワメというトラウトも棲息する。
どちらにしろ、この本エノハは激減しているのは間違いなく、何度も述べてきたが
大切にしたい魚である事に間違いは無い。
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